Q.最近,「定年後再雇用,同じ業務で賃金格差は違法」という新聞記事を見ました。従来と実務の取り扱いが変わるのでしょうか。当社は,定年後再雇用制度を採用しています。来年3月に60歳定年を迎え,4月から再雇用となる従業員がいますが,賃金をどのように設定すべきでしょうか。

2016年6月10日

A.一般的に,定年退職前後を通じて職務内容が同様であっても,定年前と比較して3割から4割程度賃金が下がるという運用は多くみられます。また,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」においても,定年後再雇用の労働条件はある程度柔軟に設定されることが想定されています(大阪高判平成22年9月14日)。
 ただし,定年前と同じ勤務時間で同じ仕事をしているような場合に,定年という理由のみで賃金を大幅に減額されることについては,従業員の納得が得られにくいため,定年後再雇用の労働条件の合理性が問題となる場合があります。
 労働契約法20条は,労働者の業務の内容,業務に伴う責任の程度,職務の内容及び配置の変更の範囲等の事情に相違がないのであれば,期間の定めがあることを理由として労働条件に不合理な相違を設けてはならないと定めています。
 定年退職後の再雇用と賃金引下げをめぐっては,定年退職後に運送会社に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が,正社員との賃金格差の是正を求めた訴訟で,「業務内容が同じなのに賃金が異なるのは不合理」であり,再雇用者の賃金を下げる運送会社の社内規定は「労働契約法20条に違反する」として,正社員との賃金の差額計約400万円を支払うよう運送会社に命じた判決が出たばかりです(東京地判平成28年5月13日)。このケースでは,運転手3人は60歳の定年後,1年契約の嘱託社員として再雇用され,再雇用前後で仕事の内容や責任の程度が変わらない一方,年収は定年前より2~3割下がっていたようです。
 この判決によるならば,例えば今後は,賃金に差を設ける場合には正社員と再雇用者の間で業務の内容,業務に伴う責任の程度,配置変更の範囲等に違いを設けて,その違いをもとに賃金に差を設けるといったように,従業員が納得できる合理的な労働条件が求められるのかもしれません。この判決の影響(実務がどのように動いていくか)については,今後も注目していく必要があるでしょう。

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