Q. 遺言書を作るにあたって,祭祀(さいし)承継者を指定しておくべきでしょうか。私の住む地域には,祭祀承継に関する慣習はありません。墓地の維持管理は手間と費用がかかるため,相続人の間で押し付け合いになるかもしれず,不安です。万が一紛争になった場合,裁判所はどのように祭祀承継者を定めるのでしょうか。

2016年11月15日

A.祭祀財産(系譜・祭具・墳墓)は,相続分や遺留分の算定に際し,相続財産の中には算入されません。そのため,相続放棄をしても,祭祀財産を承継することができます。祭祀財産承継者には,祭祀主宰を理由に特別の相続分が与えられたり,祭祀料として当然に他の相続人よりも多くの遺産の分配を受ける権利はありません(東京高決昭和28年9月4日)。

 祭祀承継者については,被相続人の指定があれば,その者が当然に祭祀承継者となります。生前行為として指定することも可能です。さらに,必ずしも明示の指定である必要はなく,黙示であっても,被相続人の指定の意思が外部から推認されるものであればよいと解されています。なお,祭祀承継者の指定は遺言事項ではないので,遺言としての効力が生ずるわけではありませんが,遺言書に祭祀承継者の指定があれば,それで被相続人による指定としての効力は生じますので,ご相談者様が遺言書で祭祀承継者を指定しておくことは有用です。
 被相続人による指定がなく,また,適用すべき慣習もない場合には,家庭裁判所が祭祀承継者を指定することになります。祭祀承継者決定の判断基準として,東京高決平成18年4月19日は,「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係,承継候補者と祭具等との間の場所的関係,祭具等の取得の目的や管理等の経緯,承継候補者の祭祀主宰の意思や能力,その他一切の事情を総合して判断すべき」とし,「祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく,死者に対する慕情,愛情,感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから,被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって,被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち,他方,被相続人からみれば,同人が生存していたのであれば,おそらく指定したであろう者をその承継者と定めるのが相当である」としています。

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