Q. 当社は、来春大学を卒業する予定の学生Aさんに対し、今秋採用内定の通知を出しました。しかし、会社の経営状態が悪化し、12月に内定を取り消すことを検討中です。内定を取り消すことに問題はあるでしょうか?

2016年5月29日

A 採用内定通知を受けた学生と会社との間には、労働契約が成立しています。
 労働契約が成立している以上、内定を取り消すことは労働契約の解約にあたります。判例(最2小判昭54.7.20 大日本印刷事件)は、内定取消事由について、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としています。
 つまり、不当な内定取消は無効とされますので、会社は内定取消について慎重に判断しなければなりません。
 たとえば、学生の成績不良による卒業延期、業務を行えないほどの健康状態の著しい悪化、重要な経歴の詐称、社会的に重大な事件による逮捕処分といった事由であれば、内定を取消すことは客観的に合理的であり、社会通念上も相当であると認められ、内定取消は有効とされる場合が多いと考えられますが(最二小判昭和55.5.30 電電公社近畿電通局事件)、あくまで個別の事案に応じて検討する必要があります。
 今回のご相談の場合、経営状態の悪化という事情は会社側の事情であり、特別な事情による突然の業績悪化(現在の人員の雇用継続さえ危うく、新規で人を雇い入れることが不可能な状態)でもない限り、経営状態は採用内定時において見通しがたっていた事情といえます。よって、内定取消事由として客観的な合理性や社会通念上の相当性があると認められる可能性は低いと考えられます。
 一方、学生Aさんとすれば、内定をもらって就職後の未来に夢や目標を抱いていたにもかかわらず、すでに多くの会社が新卒採用を終えている時期に突然内定を取り消され、新たな就職先を見つけることも困難な状況に陥りかねません。仮にそうなった場合、Aさんが御社に対して、内定取消が解約権濫用で無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める可能性も否定できません。
 よって、今回のように企業側の事由により内定を取り消す場合には、後々損害賠償を請求されるなどの紛争が起こらないよう、御社としては、Aさんに対し十分に事情の説明を行い、新しい就職先の紹介に努めるなど、Aさんが内定取消について十分に納得できる形で、Aに与える不利益を最小限に抑える努力をされることをお勧めいたします。
 当事務所は、会社社長様や採用ご担当者様から内定取消に関するご相談をお受けすることも多くございます。お困りの際はお気軽にご相談ください。            以上

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