Q.A会社は,今春大学を卒業する予定の学生Bさんに対し,採用内定の通知を出しました。しかし,入社前研修でBさんの能力不足が判明したため,内定を取り消すことを検討中です。採用内定を取り消すことに問題はあるでしょうか?

2017年2月 6日

A.採用内定通知を受けた学生と会社との間には,労働契約が成立しています。
 労働契約が成立している以上,内定を取り消すことは労働契約の解約にあたります。判例(最2小判昭54.7.20 大日本印刷事件)が,内定取消事由について,「採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できないような事実であって,これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としていることは,以前,本サイトの相談事例(平成28年5月29日)として掲載しているとおりです。

 今回のご相談は,入社前研修が問題となっています。
 論文作成のため入社前研修を度々欠席し,参加した際には講師による評価が低かった学生の内定が取り消された事例について,東京地判平成17年1月28日は,「入社日において労働契約の効力が発生する効力始期付の内定では,使用者が,内定者に対して,本来は入社後に業務として行われるべき入社日前の研修等を業務命令として命ずる根拠はないというべきであり,効力始期付の内定における入社日前の研修等は,飽くまで使用者からの要請に対する内定者の任意の同意に基づいて実施されるものといわざるを得ない」とし,「使用者は,内定者の生活の本拠が,学生生活等労働関係以外の場所に存している以上,これを尊重し,本来入社以後に行われるべき研修等によって学業等を阻害してはならないというべきであり,入社日前の研修等について同意しなかった内定者に対して,内定取消しはもちろん,不利益な取扱いをすることは許されず,また,一旦参加に同意した内定者が,学業への支障などといった合理的な理由に基づき,入社日前の研修等への参加を取りやめる旨申し出たときは,これを免除すべき信義則上の義務を負っていると解するのが相当である」としました。
 また,この裁判例においては,入社前研修での講師の学生に対する評価は,「抽象的な印象にすぎず,原告の社員としての適格性,従業員としての能力が著しく劣っており,教育可能性がないことを示すものということはできず,他の内定者との間に決定的な差異があることを示すものでもないから,当該評価をもって,本件内定取消しに客観的合理的理由があるとすることはできない」とし,「学生が直前研修に参加すべき義務はないのであるから,直前研修での出来事をもって,内定を取り消すことは許されない」としました。
 個別の事案によって具体的に検討する必要がありますが,内定取消の判断は慎重に行わなければなりません。     

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