新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下の法律問題 <賃料の減額請求①>

2020年5月 2日

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により,営業を自粛せざるを得ない飲食店,旅館・ホテル等にとって,固定費となる賃料の支払は重いです。経営者としては,収入がなくなり,また,それは経営者に何ら責任がないものであることから,賃貸人に対して賃料の減額を請求したいのが人情です。これは,マスコミ等でも頻繁に取り上げられ,政府も賃借人保護の政策を総動員しようとしていることからも,切実な問題です。以下では,法律問題として整理をします。

賃料の減額については,民法及び借地借家法に定めがあります。
●民法609条(減収による賃料の減額請求)
耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人は,不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは,その収益の額に至るまで,賃料の減額を請求することができる。
●民法611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第1項 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において,それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは,賃料は,その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて,減額される。
●借地借家法32条(借賃増減請求権)
第1項 建物の借賃が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし,一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には,その定めに従う。


 まず,民法609条を反対解釈すれば,「耕作又は牧畜」以外の目的での土地賃借人が,不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときには,土地賃料の減額請求はできないという解釈になりそうです。また,民法609条は,土地賃貸借の規定ですから,これを反対解釈すれば,建物賃借人が,不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときには,建物賃料の減額請求はできないという解釈になります。
 これに対し,「耕作又は牧畜」以外の目的,例えば,テナントビルの敷地目的の土地賃貸借に民法609条を類推適用する,さらには,建物賃貸借に民法609条を類推適用するとの見解も考えられます。しかし,これは解釈論として無理がありそうです。「耕作又は牧畜」目的という農業は,まさに天気・天候に左右される業種です。民法は,その土地賃借人に限り,「不可抗力によって賃料より少ない収益を得たとき」と明確に場面設定をしているからです。
 以上の検討からすると,民法609条を根拠に,土地を借りて建物を建てている旅館・ホテル等の賃借人が土地賃料の減額を請求すること,また,テナントビルに入っている飲食店等の建物賃借人が賃貸人に対して建物賃料の減額を請求することは,難しいと思われます。

ページの先頭へ戻る

トップページ

業務内容

採用情報

お問い合わせ