新型コロナウイルス感染症の影響下の法律問題 1(賃料の減額請求②)

2020年5月13日

 民法611条については,新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」といいます。)の感染拡大による各種対応が民法611条にいう「その他の事由」に当たるのか,という解釈の問題となります。これは,新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年制定。改正法施行は令和2年3月14日。(以下「特別措置法」といいます。))が登場します。

 政府又は地方自治体の「自粛要請」に応じて,賃借人が事業所や店舗の営業を閉じても,それはあくまで経営者の判断として,営業を閉じたに過ぎず,「自粛要請」に真摯に対応したのに酷であると思いますが,「その他の事由」には該当しないとの解釈が可能です。賃借人は賃料を支払う必要があります。

 これに対し,特別措置法24条9項の都道府県対策本部長の権限による「休業要請」に応じて,賃借人が事業所や店舗の営業を閉じた場合については,「その他の事由」に当たると解されます。それが「協力の要請」であり。罰則等の強制力を以ってするものではなくても,法治国家において,政府の明確な協力要請に基づいて行動するのは,是とされるべきであり,後に紛争となった場合,裁判所においても,そのような行動は是認されると思われるからです。ましてや,同法第45条(感染を防止するための協力要請等)に基づく協力要請の場合には,「その他の事由」に当たると解されます。

 もっとも,事業所や店舗の営業を閉じた場合であっても,そこには,賃借人の什器備品があるわけですから,その限りでは,賃借物の使用収益はできていることになります。したがって,24条や45条の休業要請があった場合でも,「その他の事由」とはならないとの解釈もありうると思います。

 最後に,借地借家法32条ですが,新型コロナの感染拡大又はその防止のために事業所や店舗の営業を閉じることが,「その他の経済事情の変動」に該当するかです。この点,積極的に考える余地もありますが,私としては,「その他の経済事情の変動」という言葉を前後の文脈の中に置いてみると,疫病の拡大又はその防止ということが,「その他の経済事情の変動」に該当するか,疑問を持っています。

 いずれにしても,賃借人からの賃料の減額請求については,リーガルなハードルがあり,また,争点も先鋭化し,双方に弁護士が入ったりして,決着までは時間も要します。

 そこで,現実的には,次の賃貸人による支払猶予と賃貸人による債務不履行の容認が現実的な交渉になるのではないかと思います。

 政府は,このように売上げ減収に苦しむ店舗やテナントを賃料の支払を楽にしようと政策を総動員しています。この政府の要請に応じて賃貸人が賃料を減額・猶予すれば,丸く収まることになります。この流れが,日本の社会経済や国民全体の福利にとって良いのは間違いないでしょう。しかし,建物賃貸人が土地を賃借している場合には,土地賃料を支払わなければなりません。建物賃貸人にビルについてのローンがあれば,これを支払う必要があります。賃貸人にも,猶予できない事情もあります。

 そもそも,土地賃貸借であれ,建物賃貸借であれ,現実の賃貸借の条件は,実に様々です。

 一般的には,土地賃貸か建物賃貸か,全国どこの地域に所在する賃貸借契約に関する議論であるのか,その地域の賃料水準はどのレベルにあるのか,人気があるエリアか否か,商業ビルか,オフィスビルか,雑居ビルか。

 個別的に見ても,法人のオーナーか,個人のオーナーか,賃貸借契約の締結当初の条件は,賃貸人に有利であったか,賃借人に有利であったか,敷金はどれだけ入っているのか,賃料は,近隣相場に比較して高いのか安いのか,賃貸人の業種,賃借人の業種・業態,賃貸人が世間体を気にするか,最終的には,解除して出ていってもらって結構!という賃借人かどうか,も判断のポイントです。

 これらの個別性を十分考慮の上,賃料の減額・猶予を論じる必要があります。

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