2020.05.08
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下の法律問題 6月の定時株主総会の延期(実務慣行に一石を投じる!)
オリンパスと日本板硝子が定時株主総会を,いずれも7月下旬又は7月以降に延期するとの新聞報道がありました(日経新聞令和2年5月1日)。
多くの上場会社は,株主の権利行使の基準日を3月末日の決算期と合わせて,6月に定期株主総会を開催し,その株主総会において,剰余金の配当(株式配当)をするという運用を行っています。決算期(3月末日)における剰余金の配当であるから基準日(3月末日)後の新株主に対し配当するのは適当ではない,との考えに基づくものです。
その結果,定時株主総会の開催時期について会社法は,何らの規定をおいていませんが,会社法124条2項において,基準日から3か月以内に行使するものだけが,基準日株主が行使することができる権利であるとされていますから,3月末日を基準日として,その時点の株主について権利行使(議決権行使や剰余金の配当の受領等)させようとするのであれば,6月以内に定時株主総会を開催する必要があるということになります。現在,コロナウィルスの感染拡大の影響により,決算や監査業務が遅れており,多くの上場会社において,定時株主総会に継続会を合わせての方式を編み出し,何とか,3月末日の基準日の株主に権利行使させられないかと検討しています。
これに対し,オリンパスと日本板硝子は,定時株主総会そのものの延期を決めてしまったわけです。定時株主総会を7月下旬又は7月以降に延期するのですから,基準日を従来通りの3月末日のままにしておくことはできません。新聞報道によれば,いずれも,基準日を5月末日や6月4日に設定したそうです。思い切った決断といいうるかもしれません。
しかし,そもそも,決算期(3月末日)における剰余金の配当であるから基準日(3月末日)後の新株主に対し配当するのは適当ではない,との考えにも批判があり,この慣行は改められるべきとの批判もあったところです(浜田道代教授・田中亘教授)。
コロナ感染拡大という未曽有の災厄の中,企業が生き残りをかけていく上での一つポイントは,多様化だと思います。オリンパスと日本板硝子の決断は,このような観点からも評価されるべきだと思います。