Q.当社では,従業員に通勤手当を支給しています。従業員Aは,昨年引っ越しをして会社までの距離が近くなったにもかかわらず,その申告を怠り,従前の経路のままの交通費を1年近く会社からもらい続けていることが発覚しました。会社としてどのように対処すべきでしょうか。 |トピックス|しょうぶ法律事務所 Q.当社では,従業員に通勤手当を支給しています。従業員Aは,昨年引っ越しをして会社までの距離が近くなったにもかかわらず,その申告を怠り,従前の経路のままの交通費を1年近く会社からもらい続けていることが発覚しました。会社としてどのように対処すべきでしょうか。 |トピックス|しょうぶ法律事務所

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Q.当社では,従業員に通勤手当を支給しています。従業員Aは,昨年引っ越しをして会社までの距離が近くなったにもかかわらず,その申告を怠り,従前の経路のままの交通費を1年近く会社からもらい続けていることが発覚しました。会社としてどのように対処すべきでしょうか。

A.通勤手当については,支給するか否か,支給する場合いくらにするかなど,会社が就業規則等において定めています。
 通勤手当の不正受給が問題となる典型的な例は,会社へ申告した通勤手段(電車やバス)と違う方法(自転車や徒歩)で通勤する場合や,今回のご相談のように,引っ越しをして会社までの距離が近くなったのにその申告をせず,従前の経路のままの交通費を会社からもらい続けるような場合があります。
 このようなことを防ぐためには,就業規則の通勤手当の支給に関する規定に,「通勤経路を変更するとき及び通勤距離に変更が生じたときは速やかに会社に届け出なければならない」,「届出を怠った時や不正の届出により通勤手当を受給したときは,その返還を求め,就業規則にもとづき懲戒処分を行うことがある」といった文言を入れておくと効果的です。

 過去の裁判例では,懲戒解雇の有効性が争われた事例として,約4年間にわたり虚偽の住所を会社に届け出て通勤手当の支給を受けていた従業員に対し,実際の居所から会社までの通勤にかかった実額と,会社から支給を受けていた通勤手当との差額である231万円を不当利得と認定し,会社から従業員に対する不当利得返還請求を認めたものがあります。この判決では,通勤手当を不正受給していたことに加え,自席を離れて業務遂行のほとんどを放棄していた不誠実な勤務態度も理由として,従業員の懲戒解雇は有効と判断されました(東京地裁平成11年11月30日)。

 今回のご相談の場合,まずは就業規則の規定をご確認いただき,就業規則にしたがって対応をとっていくこととなります。ただし,従業員の勤務態度に日頃から問題がない場合に,通勤手当の不正受給のみを理由としてどこまでの対応ができるか(返還請求や懲戒処分等)については,個別の事案ごとに検討する必要があるでしょう。悪質で金額が大きいケースもあれば,従業員がうっかり届出を忘れていたケースもあるかもしれません。
 一般的な対策としては,通勤経路に限らず,必要な事項について正確に会社に届出報告を義務付ける規定を就業規則におき,朝礼等,日常のコミュニケーションの中で従業員に周知し,注意喚起をしておくことが重要です。

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