2025.05.28
株主総会についての法改正が検討されています③
(前回の続き)
2 当日の決議手続の省略
株主総会では、議決権の事前行使によって、決議の内容があらかじめ決まっている場合があります。
ところが、現行法では、そのような場合であっても、株主総会当日の説明などに不備があると、株式総会決議の取消しの訴えを起こされるおそれがあります。
そのため、株主総会当日前に既に決議の帰趨が決しているような場合でも、会社側は、株主総会のために、多くの費用と労力をかけて、入念な準備と慎重な対応を行っています。
この点についての効率化、合理化を進めるため、事前の議決権行使によって決議内容があらかじめ決まっている場合について、事前の議決権行使により株主総会の決議があったものとみなす制度を創設することが検討されています(「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 会社法の改正に関する報告書」(経済産業省))。
参考: 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 報告書(METI/経済産業省)
この点については、公益社団法人商事法務研究会の「会社法制研究会報告書」も取り上げています。
同報告書でも、上のような制度を創設することは考えられることだとしています。
その上で、こうした取扱いを正当化する根拠について、決議要件を満たしたことをもって足りるとするか、定款の定めがあることを要するかが問題となる、と指摘しています。
また、同報告書では、対象となる株式会社の範囲をどこまでにするか、事前に決議があったものとみなされた場合でも株主総会の開催は必要か、といった点についても、検討を加えています。
参考:「会社法制研究会報告書」(公益社団法人商事法務研究会).pdf
ほかにも、経済産業省の「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 会社法の改正に関する報告書」では、
- 株主提案権の要件について、議決権数を基準とする要件(議決権300個)を廃止し、代替的に、投資金額の要件や株主人数の要件を設定することの要否などについて検討すること
- 現在は産業競争力強化法で特例的に認められているバーチャルオンリー株主総会を、会社法上でも認められるように法改正することを検討すること
- 株主総会での株主の質問権・取締役等の説明義務の範囲・程度の見直し、株主総会当日の議案提案権の制度の見直し、株主総会決議取消事由の範囲の見直し
などに言及されています。
参考: 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 報告書(METI/経済産業省)
これらが実現すれば、株主総会の様子は、これまでとは大きく変わる可能性があります。
弁護士としても、法改正に関する動向をチェックし、今後の趨勢を見極めていきたいと思います。