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「控訴審」とはどういうものか?②~控訴審の運用の実際②

前回ご紹介したとおり、現行の民事訴訟では、法律上は続審制(控訴審で提出された新しい資料と第一審の資料の両方を使用する仕組み)がとられていますが、実際には事後審的(第一審が使用した資料を基に判断する仕組み)な運用が行われています。

具体的には、控訴審では、ほぼ全てのケースで、第一審の審理で提出された主張や証拠、尋問の結果を、そのまま控訴審での判断に使用しています。

尋問のやり直しはほとんどの場合ありませんし、よほどのことがない限り、主張整理のやり直しもありません。

控訴審になって新たな主張や証拠を追加しようとしても、「時機に遅れた攻撃防御方法」(民事訴訟法297条、1571項)として採用してもらえないことも多くあります。

実際、「令和5年司法統計年報 1 民事・行政編」をみると、控訴審通常訴訟の既済事件は年間1万件を超えていますが(表39など)、そのうちで、控訴審で改めて証人調べ、当事者尋問を行った件数は、それぞれ100件程度ずつとなっています(第43表)。

口頭弁論の回数も、口頭弁論を経た事件総数の約8割が1回のみとなっており、大半の事件が初回の口頭弁論で審理終結とされていますので、控訴審の段階で新たな主張や証拠を提出することが難しいことがわかります(第41表)。

 

参考:最高裁判所事務総局「令和5年司法統計年報 1 民事・行政編」.pdf


こうした事後審的な運用は、第一審と同じ審理を繰り返すことなく裁判を合理的かつ迅速に進めることができる、第一審での審理で主張立証を出し尽くすことを当事者に意識させることができ、第一審の審理を充実させるのに間接的に役立つ、などのメリットがあります。

それに、控訴審も、新しい主張や立証を全く受け付けないわけではなく、必要な場合に、控訴審で新たに提出された主張や証拠についても取り上げて審理しています。

ただ、こうした実態があることを認識し、弁護士であっても当事者本人であっても、「控訴審でもう一度審理してもらえるから、第一審ではこの主張や証拠は出さないでいいだろう」「第一審の尋問では上手く話せなかったけど、控訴審でもう一度尋問してもらえるから大丈夫」などと考えることなく、第一審の段階で、出せる主張や証拠は全て出し尽くし、尋問にも最善を尽くすこと大切です。

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