「控訴審」とはどういうものか?④~控訴審での「取下げ」と附帯控訴 |トピックス|しょうぶ法律事務所 「控訴審」とはどういうものか?④~控訴審での「取下げ」と附帯控訴 |トピックス|しょうぶ法律事務所

topics

「控訴審」とはどういうものか?④~控訴審での「取下げ」と附帯控訴

2.控訴の申立てに関連する行為について

○控訴を取り下げるとどうなる?

控訴を申し立てた後も、控訴審の終局判決があるまでは、控訴を取り下げることができます。

加えて、控訴審であっても、判決が確定するまでは、訴えの取下げをすることも可能です。

ここで注意しなければならないのは、控訴の取下げと訴えの取下げは違うということです。

控訴の取下げをした場合は、第一審判決が確定することになります。

一方、訴えの取下げの場合は、第一審の判決の効力はなくなり、さらに、同一事件について再度訴えを提起することができなくなります(民事訴訟法2622項)。また、訴えを取り下げるには被告の同意も必要です。

 

そのため、原告が控訴をしているケース(又は反訴を提起した被告が控訴をしたケース)で、控訴審で「取下げ」をするときには、訴えを取り下げるのか控訴を取り下げるのかを慎重に検討する必要があります。

さらに、裁判所にどちらを取り下げたかについて誤解されないよう、書類の記載を明確にしておくことも必要です。

弁護士にとっても、控訴審で「取下げ」をする際は、依頼者に、訴えの取下げと控訴の取下げがあること、それぞれの効果の違いを十分に説明し、よく話し合って手続を進めることが重要です。

附帯控訴とは?

「附帯控訴」という言葉は、一般的にはあまり使われていませんので、耳慣れないと感じる方も多いかと思います。

「附帯控訴」は、わかりやすく説明すると、控訴をしなかった当事者が、相手方から控訴を申し立てられた後で、「自分もやはり第一審の判決をより有利に変更してほしい」と考えたときに行う手続きです。


たとえば、原告が被告に対して1000万円の損害賠償を請求していたところ、第一審で700万円の限度で請求が認められたとします。

原告としては、早期に解決したいこともあり控訴は提起しないこととしましたが、被告からは、第一審の判決を不服として控訴が申し立てられました。

この場合、被告からだけ控訴が申し立てられていますので、このままだと、控訴審が損害賠償額を700万円から増額することはありません(不利益変更禁止の原則)。

しかし、原告としては、「早く解決させたいからいったんは控訴を諦めたけれども、どうせ被告から控訴されるのだったら、再度1000万円の損害賠償を求めたい。」と考えることもあるでしょう。

このような場合には、原告から附帯控訴を申し立てれば、控訴審で、損害賠償を700万円から増額してもらえる可能性が出てきます。

 

ただ、相手方が控訴を取り下げた場合、附帯控訴も効果がなくなってしまいますので、注意が必要です(附帯控訴が控訴の要件〔控訴期間内に申し立てられているなど〕を満たしている場合は、控訴が取り下げられても効力が持続します)。

 

3.終わりに

この連載でご紹介したとおり、控訴審には、第一審とは違う特徴や手続きがあります。

裁判をする際には、第一審の段階から、控訴審のこうした特徴を頭において、先を見越した訴訟活動をすること(たとえば、主張立証や尋問には第一審の段階から全力を尽くすことなど)が大切だということを、ご理解いただけると幸いです。

一覧に戻る

[ CONTACT ]

ご質問やご相談については,まずはお問い合わせフォームから,お気軽にお問い合わせください。