2025.11.25
中小企業では株主管理が重要です~オーナー社長の相続を中心に~ ④
(前回の続き)
③ 株式の価格は思っているより高くなる可能性が高い
非公開会社の株式の価格を評価する方法には、様々なものがあります。
中小企業の経営者の方にとって身近な評価額は、税務上用いられる評価方法によって算定された評価額でしょう。
しかし、この評価額は、必ずしもすべての場面で通用するものとはなっていません。
株主から株式を買い取る場合や、相続財産の評価額を算定する場合、裁判になった場合などには、他の方法(DCF法、時価純資産法、配当還元法など)が用いられ、より高い評価額が付けられることが多くなっています。
そのため、税務上の評価額を基準として相続対策を進めていると、予想していなかった問題が生じることがあります。
A(相続人は妻と子2人)には、次の財産がありました。
・自分が経営している会社の株式
・6000万円の預貯金
・6000万円相当の土地建物
Aは、株式の評価額は合計1億円だと認識していたので、遺言で、遺留分を侵害しないよう、「後継者となる長男には会社の株式全部を、妻には土地建物と預貯金2000万円(合計8000万円相当)を、次男には預貯金4000万円を、それぞれ相続させる」としていました。
株式の評価額が合計1億円であれば、遺産の総額は2億2000万円なので、妻の遺留分(1/4)は5500万円、次男の遺留分(1/8)は2750万円となります。
そのため、Aは、上記の遺言内容であれば、遺留分の侵害は起こらないと考えていたのです。
ところが、Aの死後に株式を再評価したところ、合計2億2000万円となりました。
この価格を前提とすると、遺産総額が3億4000万円となります。
そうすると、妻の遺留分(1/4)の額は8500万円、次男の遺留分(1/8)の額は4250万円となり、Aの遺言では妻と次男の遺留分が侵害されることとなります。
このように、オーナー社長の方の相続対策では様々な可能性を考慮に入れる必要がありますので、対応する際には、弁護士としても慎重さが求められます。
上の事例のような問題が生じないように、自社の株式については、税務上の評価額だけでなく、DCF法などを用いて算出した評価額も把握しておくことが大切です。
こうした評価額は、多くの場合、公認会計士に算出してもらいます。
また、株式を生前贈与しておくのであれば、「遺留分に関する民法の特例」(経営承継円滑化法)を活用し、生前贈与した自社株式の価額を除外又は固定してしまうことも考えられます。
(次回に続く)