2025.10.01
中小企業のM&Aでは、仲介業者とのトラブルに注意が必要です⑤
(前回の続き)
2 M&Aの仲介業者の立場や限界について知っておく
M&Aの仲介業者に依頼する際、「自分が依頼者なのだから、仲介業者は自分に有利になるように動いてくれる」と思うかもしれませんが、そうとは限りません。
M&Aの仲介業者は、M&Aの相手方とも仲介契約を結んでいる場合があります。
そのような場合、仲介業者は、一方にとって有利になるように動くことはできないのです。
さらに、M&Aの仲介業者は、M&Aが成立・実行されることで報酬を得られるという立場にあります(この点は、仲介業者が相手方との間で契約しているかどうかで違いはありません)。
そのため、依頼者にとって最善でなくとも、M&Aを成立・実行させようとする場合があります。
仲介業者に依頼する際には、こうした仲介業者の立場や限界を十分に理解しておくことが重要です。
自分の立場に立った専門家のサポートがほしいという場合は、別途弁護士に依頼することなどが必要になります。
仲介業者の業務内容についても、あらかじめ業者に尋ね、よく説明してもらうと良いでしょう。
なお、「中小M&Aガイドライン(第3版)―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―」(中小企業庁)では、相手方から受け取る手数料に関する事項等についても、相手方を含めた手数料の総額がM&Aの成立やその条件(譲渡額等)に影響を与える可能性がある旨も含めて説明するべきであるとされています(p.91)。
仲介業者からこのような説明がなされない場合は、依頼者自ら説明を求めることも考えられます。
また、同ガイドラインには、M&Aのプロセスごとに仲介業者が提供する主な業務の例も挙げられています(pp.71, 72, 88, 89)ので、仲介業者と契約する前にご一読されることをおすすめします。
参考:「中小M&Aガイドライン(第3版)―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―」(中小企業庁).pdf
(次回に続く)