2025.05.21
株主総会についての法改正が検討されています②
(前回の続き)
株主総会に関する法改正について、取り上げられている論点の一部をご紹介していきます。
1 書面決議
現行法上、株主総会の書面決議を行うには、株主の全員が株主総会の議案について書面等により同意の意思表示をしていることが必要です(会社法319条1項)。
そのため、株主数が相対的に少ない非上場会社でも、ごく少数の株主の同意が得られない、株主のうち1名だけと連絡が取れないといったことにより、書面決議を利用できず、迅速な意思決定が妨げられるような事例があります。
そこで、経済産業省の「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 会社法の改正に関する報告書」(令和7年1月17日)では、より機動的な経営ができるよう、株主の利益に配慮しながら、非上場会社について書面決議の要件を緩和することを検討することが望ましいとされています。
株主の利益保護のための措置としては、
- 全株主に対して書面決議の対象とする議案の通知を義務付ける
- 定款への記載を要件とする等、あらかじめ株主の意思を確認する手続を義務付ける
- 決議に向けた審議が特に重要と考えられる議案があれば、書面決議要件の緩和の例外とする
- 書面決議には大多数(例:特別支配株主と同水準の9割等)の株主の同意を要件とする
といったものが挙げられています。
参考: 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 報告書(METI/経済産業省)
この点に関連して、公益社団法人商事法務研究会の「会社法制研究会報告書」では、
-
決議要件に相当する株主の同意があれば書面決議ができるものとするとの考え方
-
議決権を行使することができる株主の議決権の10分の9以上を有する株主の同意が必要であるとする考え方
などがあり得ることが示されています。
そのうえで、同報告書では、会社法上の公開会社でない比較的小規模な株式会社では、株主総会の招集通知は総会の日の1週間前に発すれば足りるので、株主総会を省略する実益が必ずしも大きいとはいえないこと、書面決議は、株主総会の招集手続を要せず、参考書類を交付することも義務付けられていないというものであるなど株主総会の基本原則を大きく修正するものであることなども指摘し、こうした点への対応の必要性にも触れています。
参考:「会社法制研究会報告書」(公益社団法人商事法務研究会).pdf
書面決議の要件が緩和されると、ベンチャー企業や小規模な会社にとっては意思決定がより機動的に行えるようになる可能性があります。
この点について法改正が行われた際には、弁護士も、どのような場面で活用できるかについてしっかりと把握し、適切なアドバイスができるようにしておくことが必要になります。
(次回に続く)